🌈2023マルティグラパレード🌈 日本から参加しました

パレードに参加して自分に起こった一番大きな変化は、「まだもう少し希望をもって生きてみよう」という安心感や希望を得られたことでした。

パレードに行く前の暗い気持ち

私は日本からパレードに参加しました。日本では、ここ最近SNS等でトランスジェンダーに対する恐怖感を煽るような投稿があふれています。さらに、今年に入ってからは、地元の県議会議員が「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないんですか」とSNSに投稿しました。抗議声明をあげるために奔走し、一段落ついたと思ったとたんに、首相秘書官が同性カップルについて「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と発言しました。

こうした発言で心を削られながら、それでも力を振り絞りながら抗議を続けるのは、めちゃくちゃしんどかったです。

そういうしんどさがピークにくると、ふと、絶望感や閉塞感で頭がいっぱいになってしまう瞬間もあります。「もう自分はこの社会で生きていくのは無理かもしれない」「どうせシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの人にとっては他人事で、傷ついた当事者が声を上げるしかないんだろうけど、でももう疲れ切ってしまった」そんな暗い思いが頭の中をぐるぐるするのです。

私は、弁護士として働き、性的マイノリティに関する訴訟に取り組んでいて、おそらく、性的マイノリティへの差別発言で傷ついた人々の中では、抗議するための言葉や環境に恵まれている立場です。そんな私でも絶望してしまう状況で、子どもや、地方で孤立している人、病気や経済的困窮など別の困難も抱えている人など、抗議が難しい状況にある人々が感じる絶望はどれだけのものだろうかと思いを巡らせると、ますますやるせない気持ちになっていきました。

シドニーの町で、安心して泣く

　そんな暗～い気持ちを振り切るように日本を飛び出し、シドニーにつくと、完全に別世界でした。どこを見てもレインボーやＬＧＢＴへの肯定的なメッセージがあふれていました。

「自分や、自分の大事な友人たちが、肯定されていいんだ」と、初めて感じる安心感で、ほっとしたら、道を歩きながら少し泣いてしまいました。日本との違いが大きすぎて「こんな

に肯定されていいの？？？」と驚くほどでした。

パレードから見える景色

パレードに参加して一番驚いた違いは、パレードそのものの規模ではなく、沿道からの応援でした。

パレード出発前からたくさんの人が沿道で場所取りをして、歩く人たちに応援の声をかけてくれました。沿道は応援に集まった人で埋め尽くされていて、道沿いの建物からも応援してもらえました。沿道の人々は年齢や人種、セクシュアリティもさまざまで、ドラァグクイーン系の人たちが並んでいるすぐ隣に、車いすユーザーのお年寄りが並んでいたりしました。手を振ったり、声をかけたり、ハイタッチしながら、楽しそうに応援をしてくれました。

私たちは誰かの隣に住んでいいし、私たちの姿を見せつけていいし、私たちの存在が社会で肯定されても社会は滅びない、、、日本で浴びた差別言論にガツーンとカウンターをかましてやるような、そんな景色が広がっていました。

パレードでも、安心して、途中でべそべそ泣いてしまいました。（泣いていたわりには、一応ちゃんと踊れた…はず！）

安心感と自信を日本に持ち帰る

　日本に帰ってくると、相変わらず差別発言は減っていないし、同性どうしの結婚を求める訴訟のために忙しい日々が戻ってきました。

　相変わらずしんどい瞬間はありますが、パレードで見た景色やシドニーの町にあふれていたレインボーや肯定的なメッセージを思い出すと、元気になれます。

　「大丈夫、私には肯定される場所がある」「マイノリティでも肯定される社会は、ちゃんとこの世の中に実現できる」そんな自信を根底にもてるようになったからです。

　今の日本社会で差別にさらされて絶望している性的マイノリティの人が一人でも多く、同じ経験をできたらいいなと思います。シドニーに行く時間やお金を準備するのは簡単なことではないかもしれませんが、どうか、一人でも多くの悩んでいる当事者に自分が肯定される安心感を知って欲しいです。

　国内の複数の調査で、性的マイノリティは自殺リスクが高いことが指摘されています。シドニーで見たような景色が日本でも実現できれば、きっと、死なずに生きてみようと思える当事者が増えるのだろうと思います。早くその日が迎えられるように、私は私の立場からできることを、頑張ります。

　ともに生きていきましょう。

Yoko Mizutani